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推理小説の感想

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた(ネタバレ感想)

基本情報

作品名:聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

作家名:井上審議

出版社:講談社文庫 

あらすじ

聖女伝説が伝わる地方で結婚式中に発生した、毒殺事件。それは、同じ盃を回し飲みした八人のうち三人(+犬)だけが殺害されるという不可解なものだった。参列した中国人美女のフーリンと、才気煥発な少年探偵・八ツ星は事件の捜査に乗り出す。数多の推理と論理的否定の果て、突然、真犯人の名乗りが!?青髪の探偵・上苙は、進化した「奇蹟の実在」を証明できるのか?(https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000027489より)

感想

前作その可能性は考えたからの2作目。

前作同様奇蹟の証明に躍起になる探偵が出てくるわけですが、彼の登場は中盤以降。それまでは前作にも登場した相棒のフーリンとスーパー小学生八ツ星君 が謎解きに挑むこととなります。

そして今作はここがターニングポイントになっているのですが、ちょうど序盤から中盤への転換点でフーリンから自己を犯人と告白する場面が登場します。ここがプロット的にも良いアクセントになってますね。この話どこに着地させるんだよ、真相はなんなんだよっていう。そこからは上笠さんが登場して安心感を持ったまま、ページをめくることができました。とりあえずこの人がいれば当面の窮地は脱出して、最後までは危機が起きないでしょっていう安心感ですね。

ただこれは良くも悪くもってポイントな気もしていて、例えば展開の意外性とかを重視する人には微妙かもしれませんね。このシリーズは探偵が出てくれば、とりあえず一通りは探偵が無双するという部分は読めるので。逆にその無双場面の論理展開とかディティールを楽しめる人には最高でしょうね。

途中で表が出てきて不可能性が示される場面は初めて推理小説であんなものを見たかもしれません。今まで何かあったかな。論理展開もきっちり詰められていましたが、なんとなく1作目の方がここは好きでしたね。でも誰かに罪を着せるという意図を起点にした推理とかそこはかなりグッときました。そもそも僕は毒殺が好きじゃないのかもしれないなあ。じゃあ、お前は読むなって感じですが。盆の口をつける部分に複数人分の致死量の毒を用意しておくっていう殺害方法にあまり惹かれなかっただけかもしれません。

最後に明かされる被害者の中に犯人という真相は、上笠さんならわかるでしょって思ってしまいました。僕はバカだから浮かびませんでしたが。言われてみればその可能性を疑ってないって推理小説素人かよって感じで、恥ずかしい限りでした。

あと途中で出てきたヒ素に耐性を持っているという説、リラ荘殺人事件を思い出して嬉しくなってしまいました。リラ荘殺人事件は名作です。興味持ったらぜひ読んでください。

なんだかんだありますが、僕はこのシリーズ好きなのでこのまま読み続けます。次作も楽しみだ。