チャイナオレンジ

推理小説の感想

スイス・アーミー・マン

基本情報

作品名:スイス・アーミー・マン

監督:ダニエルズ

撮影:ラーキン・サイプル

編集:マシュー・ハンナム

音楽:アンディー・ハル、ロバート・マクダウェル

出演:ダニエル・ラドクリフポール・ダノメアリー・エリザベス・ウィンステッド

 

あらすじ

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?(以上、http://sam-movie.jp/より)

 

 

 感想

簡単なストーリーを書いておくと、自殺しようとしていたハンクが浜辺でメニーの死体を見つける。死体のオナラで無人島を脱出。その後も色々死体の機能を使って、なんとか故郷の意中の人の元に辿りつく。一騒ぎ起こしながらも、最後はメニーを再び海に送り出すって感じでした。

正直最初は入り込めなかったんですよねどこから虚構でどこが現実なんだって感じで。

だっていきなり死体のメニー(ダニエル・ラドクリフ)は喋り始めるし、ありえない挙動をするしで。でもハンクとメニーの道中を見ているとだんだん二人に気持ちがのってきて、既に死人なのですがメニー死なないでくれと思ってしまい、結果楽しめました。というかこれって、ハンクがメニーというイマジナリーフレンドと触れ合って成長するということなんですよね。要するにハンクの一人二役なんです。死体でサバイバルする話なのかと思って見たら、意外と内省的な物語でした。

全体的な感想なのですが、メニーが色々ハンクに質問する場面があって、それがなんか示唆に富むなと思いました。特に人生ってなんだ?みたいな問いは、答えられないなと20代後半独身の僕は思いましたね。何が自分の人生なんでしょうね。

 自分の中で印象に残ったシーンがあって、ハンクは意中の女性の盗撮画像を自分のスマホの待ち受けにしてるんですが、それが最終的にその意中の女性にバレてしまいます。そこで、「なぜ私の写真を?」と問われるのですが、その時の返答が「君は楽しそうで、僕は孤独だったから」というようなものだったと思います。

そもそもハンクは自分が傷つくのを恐れて何事も行動できない男だったんだと思うんですよね。それがメニーとのやりとりの中で変化していくというのがこの映画なんですが、これはかなり他人事のように思えない部分があります。

というのも、今の職場には50~100人くらい同期がいるはずなのですが、ほとんど面識もなく気軽に飲みに誘える相手すら存在しません。その一方で他の同期の人たちは色々と交友関係を広げているらしく、上司に「そういうのないの?」って聞かれても根暗な僕はそういうものに興味がない振りをするしかありません。でもそれって自分を守るための嘘なんですよね。僕も誰かと仲良くしたかったのですが、結局それができなかったので興味がないことで正当化するしかないというか。そんな訳で、同期全体の飲み会に出席して会話に入ることができなくて愛想笑いをするだけのクソつまらなかった記憶等が呼び起こされてしまいました。楽しそうなものを目の前にして自分が孤独だと、惨めながらも惹かれてしまいます、という。なんならサラみたいな美人な人が同期にいても話しかけられないんだろうなとか、そんなことを思いながら社会人になってから友達も恋人もいない僕は一人で気持ち悪くなってしまいました。

笑って泣ける映画ながらも僕は少し苦い気持ちになってしまいましたが、普通の人は楽しく笑えると思います。(僕も決してつまらなかった訳ではない)

だいたい、スイス・アーミー・マンってタイトルが洒落てます。スイスアーミーナイフのように多機能ながらも最大の機能はハンクを自分自身に向き合わせたことでした。あと、ダニエル・ラドクリフの死体の演技を見られるだけでも面白いです。メアリー・エリザベス・ウィンステッドって知らなかったけど美人だ。