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推理小説の感想

母なる証明(ネタバレ感想)

基本情報

作品名:母なる証明

監督:ポン・ジュノ

出演:キム・へジャウォン・ビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン

 

あらすじ

殺人の追憶」「グエムル/漢江の怪物」のポン・ジュノ監督が手がけた3年ぶりの長編。国民的人気女優のキム・ヘジャ、5年ぶりの映画出演となるウォンビンが親子を熱演する。貧しいながらも幸せに暮らしていた親子であったが、ある日1人息子が警察に拘束されてしまう。殺人事件の容疑者にされてしまった息子の無実を信じ、孤立無援の母は悲しむ間もなく、たった1人で真相に迫ろうとするのだが……。(https://eiga.com/movie/54360/より)

 

感想

これはなんと言っていいのか分からない映画です。しかしだからと言って決して駄作ではなく、寧ろ凄い作品なのです。

見た後に最初に思ったのは、なんて言っていいかわからねえわという感想でした。

まず、トジュンの瞳ですよね。トジュンってどこまで理解して色々喋ってんですかね。最初は無垢な瞳に見えるんですよ。それは彼に知的障害があるってことが劇中で示されていて、我々が無意識にそう感じてしまうのかもしれないですが。でも途中、事件の真相が明らかになってからこいつどこまで理解してその瞳なんだよというね。同じ瞳なのに一種の不気味さを纏う訳です。

普通このストーリーを聞いたら、ハートウォーミングな方向が自然だと思うんですよ。だって、愛する一人息子の無実を明らかにするために母親が努力するんです。だから母親を応援してしまって、共感して・・・っていうのが通常想定される流れですよね。でもこの映画はあんまりそんなことはないんですよ。あんまり母親を応援できませんでした。逆に彼女が怖くなってくる。何故なのかって考えてみると、劇中に常に漂っている普通じゃないぞっていう不穏な雰囲気が原因なのかな。でも、何がこの雰囲気を発生させているのか分からないんですよね。

トジュンが別の犯人の判明によって無実とされたあと、母親がその犯人に会って号泣するシーンがあるんですが、最初なんで母親が泣いてるのか分からなかったんです。でも見終わって考えてみると、多分逮捕された彼もトジュンと同じ境遇だけど決定的に違うのは親族がいない。特にあなたお母さんはいるの?ってセリフからも分かるように、お母さんがいない。だから誰も助けてくれる人がいない。真犯人がトジュンであることを知りながら母親は彼の境遇を知って、彼は確実にトジュンの身代わりになる訳です。多分贖罪の涙だったんですかね。

この映画って母親の立場の人が見たら何か自分とは違った感想を持つのかもしれません。独身異常男性の僕は想像するしかないんでしょうね。

ウォンビンさんってこれが兵役からの復帰作だったんですね。この役を復帰作に選ぶことができるなんて、凄い胆力です本当に。あとキム・へジャも迫力が凄いな。とにかく人の顔が印象に残る映画でした。