チャイナオレンジ

推理小説の感想

十二の贄(ネタバレ感想)

基本情報

作品名:十二の贄

作家:三津田信三

出版:角川ホラー文庫

 

あらすじ

中学生の悠馬は、莫大な資産を持つ大面グループの総帥・幸子に引き取られた。7人の異母兄弟と5人の叔父・叔母との同居生活は平和に営まれたが、幸子が死亡し、不可解な遺言状が見つかって状況は一変する。遺産相続人13人の生死によって、遺産の取り分が増減するというのだ。しかも早速、事件は起きた。依頼を受けた俊一郎は死相を手掛かりに解決を目指すが、次々と犠牲者が出てしまい――。(以上、https://www.kadokawa.co.jp/product/321507000168/より)

 

感想

 まず、なぜ私がブログを始めたかと言いますと、私は推理小説が好きで、小学生くらいのころから愛読しているのですが、読書をした時点で自分が何を思ったか忘れてしまうことが多く、悲しくなったのでブログという形で記録をしようと思いました。

推理小説が好きとか言いながら、いきなり飛び道具のような作品の感想を書くことをお許しください。

 

まず死相学探偵とは、というところから始めると、死相が見える探偵です。(全く説明になっていない)

本作はシリーズ第5作目となっていますが、いつも大まかな流れは、誰かが怪異や呪いにあう。当人や関係者が探偵に相談。探偵が依頼人を見る(ちなみにこの作業を劇中では死視と言います)と死相が表れているので、死相を消すために探偵が奔走するというものです。具体的には、呪いの仕組みや呪いを仕掛けた人間を推理することとなります。

「誰が死ぬか分かれば謎解きなんて余裕だろ」、「出てない奴が犯人だろ」、と思われるかもしれませんが、そう上手くもいかないんですよね。探偵にわかるのは死相が出ているということと、その呪いの象徴だけなんです。

これはある意味かなり画期的な発明なのです。なぜかというと、推理小説では誰が殺されるか分からないというドキドキ感も一つの楽しみなのですが、この死相学探偵シリーズでは殺害対象が予めわかってしまっているんですね。なので、金田一少年の事件簿で言うところの佐木1号が殺害されるような衝撃は味わえないんですね。

じゃあ、どこでスリルがあるんだというと、「どこで人が死ぬのが止まるのか」という点です。前述したとおり、探偵は死相までは見えても、デスノートのように寿命が見えるわけではありません。なので死が訪れる順番までは分からないんですよね。

 

以上、前段が長くなってしまいましたが以下本作の感想に進みます。

まず良いところの1点目。これは三津田信三さんの十八番なのですが、少年視点での恐怖の描写でしょう。小説の冒頭から一人で肝試し的なことをするのですが、流石の描写だと痺れました。善光寺を思い出しました。

次に良いところの2点目。犯人を隠す巧妙さですね。これは完全に負けました。これは上手い隠し方だなと本当に感服です。かなり大々的にヒントも出されてるのにわかりませんでした。そうやって死視の対象から外すのかと、ここが一番この作品の中で好きなポイントでしたね。「死相が出てねえ奴が犯人だろ」ということはあまりないと言っておきながら、これは嘘でした。今回に限ってはそもそも死視がされてない悠真君が犯人だったんですね。

良いところの3点目。これは動機です。遺産相続の条件が色々あるのですが、結局それだったかと。理解するのめんどくせえなと思いながら読んでいたのですが、まさかめんどくせえと思ったままで良いとは。犯人が皆殺しするつもりだったんですからね。。。

最後4点目。多重解決ですね。これも三津田信三さんの十八番です。探偵が自分の思考を辿っていく姿が結構好きなんですよね。

 

ただ悪い点が1点。影って結局なんだったんだと。幸子は一体なにがしたかったのかなというのはわかりませんでした。まあ分からないことが怪異だからいいんですけどね。なんでも知りたいなら普通の推理小説読んでろよって感じですね、すみません。

 

このシリーズ自体本当に面白いので人気が出て欲しいです。サクサク読めますし。